人間と環境とは微妙な調和を図るのと共に両者の存亡のかかった規模壮大な調節を実行しなくてはなりません。いま科学者たちは殆ど総ての領域でこの問題に直し、積極的に取組もうとしていますが、各領域のあいだの情報交換も研究協力も、十分進捗しているとは言い難く、アプローチの方向に欠落があるのと同様に、重複のあることを痛感させられます。この際最も効的な成をあげるために有効適切な組織が望まれる次第です。

一昨年、日本学術振興会と米国NSF(National Science Foundation)その他の援財を得て「人間と環境の相互作用に関する日米セミナー」が催され、米国よりDr.W.H.Ittelson, Dr.S.Wapner, Dr.R.Bechtelら7名が来日、日本よりは萩野源一、望月衛、新谷洋二ら12名の発表者に十余名の討論者も加わって4日間の研究発表、討論、見学の会が催されました(編者注)。参加者は心理学・社会学・建築学・都市計画学・社会工学等の専門家でしたが、催しを通じて広く人間―環境問題に関わる研究者が、研究発表、情報の交換の場を設ける必要が痛感され、また諸外国でもEDRA(Environment Design Research Association)やIAPS(International Association for the Study of People and their Physical Surroundings)などが設立されそれらのメンバーから共同研究の呼びかけが行われるようになりました。

そこで前記セミナーに参加した者の中の十名ほどが協議を重ね、最初から大きな組織を作るのでなく、以上の如き趣旨に積極的な関心をもたれる関係領域の方々に呼びかけ、まずは数十名の会をもち、その名称は「人間・環境学会」(Man- Environment Research Association = MERA)としてはどうかという意見が打出されました。その会員は各研究機関との媒介、連絡に当たっていただきたいと望む次第です。
貴下には前記の趣旨を御理解いただき母体組織の一員としてご参加くださいますようお願い申し上げます。

世話人代表
望月 衛
吉武 泰水
萩野 源


・「人間・環境学会(仮称)に就いてのご案内」(1982年8月19日)より転載
・編者注:「Trends in Studies of Environmental Psychology in Japan」参照