第126回研究会「見守りにおける道具と人間:その加減を探る」のご案内

「見守り」という両義的な言葉がある。見て守る、弱い者に遠目から緩やかな視線を送り、困っている様子に気づくとただちに対応する支援的な姿勢は、離れていても行動の自由を許さない支配的な姿勢へと反転しうる。
そして見守る人間の物理的な身体は、道具を配置することで見守りの範囲をいかようにも延伸できる。進化の過程で四足歩行から二足歩行に移行して移動から解放された手を持つ人間の真骨頂は、「ホモ・サピエンス(homo sapiens)」の代わりに「ホモ・ハンドメイド(homo handmade)」と呼びうるような道具をはじめとするテクノロジーの使用による身体的な機能の拡張にある(リュンボルグ, 2020/2014)。たとえば、柵。乳児の周りには柵がはりめぐらされている。子どもたちが遊ぶ公園にも柵は設置されている。さらに高齢者施設のベッド周りにも柵はある。見守る人間が見えない場所にいても、柵によって弱い者たちを危険から守ることができる。
近年は情報・通信機器の発展により、見守りの道具は多様化し、空間の制約を受けにくくなっている。生活空間にセンサーやカメラを配置すること、身の回りの道具に通信機能を加えること、GPSをはじめアプリケーションをスマートフォンで利用すること、それからコンパニオンロボットに通信機能を組み込むなど見守りの道具は多様化し増えている。
同じ地域の中で生涯の暮らしが完結せずに、あちこちと移動し分散していることが増えている現代において——親子で別の居住地、職住の分離、地域外の学校など——離れた場所から見守ることができる道具の多様化は、見守る者のニーズに概ね応えてくれている。その一方で、見守られる者にとって見守りの道具が身の周りに配置されていることは望んでいる状況だろうか?
おそらく見守りという言葉が両義的であるように、見守りを反映する道具にも人間を支える面と拘束する面が不可避に含まれるのではないか。そのため、道具や機能は増やせば増やすほど生活が充実するとは限らず、加減こそが生活を充実させるうえで大事な営みではないか、この問題意識が本研究会を企画した背景にある。
本研究会の主題は、見守り道具の加減を考えることにある。簡単に結論が出ることは難しいかもしれない。そのためていねいにゆっくりいろんな角度からの話を重ねてみることを試み、今後の研究の視点や方向性を考えたい。多めの登壇者には短く話題提供をいただき、さらに参加者の方からの経験に即した話も期待したい。

リュンボルグ, G. 2020. 手に映る脳、脳を宿す手. 砂川 融(監訳). 医学書院. (Lundborg, G. 2014. The Hand and the Brain: From Lucy’s Thumb to the Thought-Controlled Robotic Hand. Springer.)

■日時:2023年3月16日(木)10時00分〜12時30分

■会場:ハイブリッド開催
□Zoom:申込者したメールアドレスにIDをお知らせします.
現地:文京学院大学本郷キャンパスS403教室(現地会場20名程度)
東京都文京区向丘1-19-1
https://www.bgu.ac.jp/about/access/

■プログラム
□趣旨説明:松本光太郎(茨城大学)
□話題提供(アルファベット順):
・畑倫子(文京学院大学)
・小島康生(中京大学)
・松田雄二(東京大学)
・澤田英三(安田女子大学)
・島田貴仁(科学警察研究所)
・鈴木毅(近畿大学)
□ディスカッション:上掲者+参加者
□司会:松本光太郎(茨城大学)

■参加費:会員・学生 無料、一般(非会員)1,000円

■参加方法:期日が近くなりましたら当日のzoom IDや参加方法の詳細を連絡しますので確実に連絡が取れるメールアドレスを申込時にご記入ください。

■申込方法:Peatixサイト(https://mera.peatix.com)で参加登録フォームに必要事項を入力してください。Peatixの使用をご希望しない場合、事務局宛にメールにて参加申し込みをしてください(受付は終了しました)。


※参加申し込み及び参加費の支払いについて

  • 事務局負担軽減及び参加費の管理を行うためPeatixサイト(https://mera.peatix.com)を利用します。そのため下記の点にご協力をお願い申し上げます。
  • Peatixの使用をご希望しない場合、メール (mera@arch.eng.osaka-u.ac.jp)にて参加申し込みをしてください。お申し込みをいただいた後、振り込み先をお伝えします。
  • Peatixについては下記のアドレスを参照ください。
    参加者ガイド:https://help-attendee.peatix.com/ja-JP/support/solutions/articles/44001821734-【初めてご利用される参加者様向け】peatixご利用の流れ
  • 参加申し込みをする際に、Peatixアカウントを作成するか、Twitter/Facebook/Google/Appleアカウントでログインしてください。お申し込み完了後、アカウントにチケットが発行されます。
  • 参加費の支払いはクレジットカード・コンビニ/ATM払い・Paypalからお選びください。
  • お申し込み後の返金は一切いたしかねますのであらかじめご了承ください。参加者側のPC・タブレットの障害や、参加者側のインターネット回線の障害により接続不良が生じた場合でも、返金はいたしませんのでご了承ください

※対面参加希望の場合の感染予防対策について

  • 対面参加を希望される場合は、事前の体調管理と、当日体調が優れない場合は来場を控えてください。具体的には、発熱、咳、咽頭痛、味覚障害等の症状がある場合、過去1週間以内に感染が引き続き拡大している国や地域への訪問歴がある場合や、そのような人との濃厚接触がある場合、過去1週間以内に新型コロナウイルス感染症陽性と診断された人との濃厚接触がある場合、過去1週間以内に同居している人に感染者がいた場合、過去1週間以内に新型コロナウイルス患者、あるいはその疑い患者が発生した場所に入場した場合は来場せずオンライン参加に変更をお願いいたします。
  • 来場する際は適切なマスクの適切な着用をお願いいたします。