第115回研究会「建築人類学のノーテイション(表記法)」(Notations of Architectural Anthropology)のご案内

  • 講演者:レイモンド・ルーカス博士 Dr. Raymond Lucas(マンチェスター大学、前建築学科長)
  • 共催:日本建築学会人類学的アプローチWG

講演概要

この講演では、新しい社会人類学と建築学とを強く結びつける基礎となる理論について概観します。これまで人類学は、人間とその生活世界を扱う学として建築学に多大な貢献をしてきたと言えますが、これまでずっと信じられてきたように建築学をより強化し精緻化すると同時に、一方で矛盾させ混乱させることにもなりました。これによる論争と挑戦はどちらの学問領域にとっても良いことでした。それは異なる学問領域を繋ごうとする場合に必ずその根底に存在することだからです。
今回お話しする学際的な取り組みでは、建築スケールの構築環境を作る実践について考えます。
ここでの中心的なリサーチ・クエスチョンは、建築家は人類学者から何を学ぶことができるかということです。
この講演では、人類学的な考え方を建築のデザイン実践と学術研究にどのように組み入れるかといった難問に答えることを目指しています。人類学は種々の建物での社会生活について適切なスケールで考えることを助けてくれます。そのスケールというのは、私たちの日常生活を構成している個人的な個別の生活世界(life-worlds)のスケールです。
二つの学問領域を統合するために、私はノーテイションを研究することを提案します。建築家はこれまで長い間、様々な形式の描画表現や記述の実験を行ってきましたが、その多くは実務に携わる建築家の道具セットの中に見ることができます。
動きを記述するためのノーテイションは、シールの著書『参加型エンバイロテクチャー(Participatory Envirotecture)』で示された規準に加えて、リンチのイメージアビリティ(Imageability)やカレンのタウンスケイプ(Townscape)などさまざまなものがあります。もともと舞踏と振付けの実践と理論から生まれたノーテイションは、さまざまな形式を取るようになり、行列的、絵画的、象徴的、軌跡的、音楽システム的ノーテイションに分類できます。
ノーテイションは、時間をかけて徐々に姿を現す建築の記述を可能にしてくれます。私たちがある空間に住み生活することや、空間と人との関係維持や協働について議論する際には、空間だけでなく時間的な側面も考えに入れなくてはなりません。
ラバン式ダンス表記法のように確立されたノーテイションよって、グループとして舞う人の身体の細かな動きを記述することができます。その絵画的ノーテイションは容易に読み取ることができ、そして外から見たときにどのような情景を作り出すかを考案して示すことができます。また行列的ノーテイションはより正確で焦点を絞った記述ができます。
私は、今和次郎とその考現学の事例に従って、ここ5年間に2つの場所(context)を調査のために訪れました。
一つ目は、ソウルの南大門市場です。ここは市の中心に位置する活気の溢れる総合市場で、公式の市場と大きな無窓壁の建物が共存していて、屋外の店では合法あるいは非合法の商いが行われています。ここでは、建築は商売人のニーズにすぐに答えるべく繰り返し形作られています。
二つ目の調査フィールドは東京の三社祭です。5月のこの祭りは、仮設的で可動の構造物を利用していますが、それらは建築物と見なすことができます。神輿はそれ自体が地面から引き離されて地域の町内を巡回する神社です。この祭りはこの都会の地域を丸3日間占拠しますが、この儀式によって浅草とそこの人々の社会的絆が再創造されると言っても良いかも知れません。
私はさまざまな記銘のための方法を実践してきました。平面図や断面図から軸測投影図や斜投影図、スペース・シンタックス図、エージェンシー行列、そして動きを捉えるさまざまな形式のノーテイションを用いて調査フィールドを記述してきました。これに加えて、私自身が考えた感覚ノーテイションは、幾何学的で視覚的な記述にとどまらず、より広い知覚環境を記述することができます。

(訳:大野隆造)

□日時

  • 2018年5月13日(日) 15時30分〜17時30分

□場所

□資料

  • 英語版案内はこちら、参考資料はこちらからダウンロードいただけます。

□参加費

  • 無料(通訳なし)

参加申込み

2018年5月8日(火)夕方5時までに、以下よりお申し込み下さい。